Japanische Klassiker mit Furigana
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あらくれ
あらくれ
徳田 秋声
Lesen Sie あらくれ von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 119.451 Zeichen · 236 Bildschirme
繭時にはまだ少し間のあるこの温泉場には、近郷の百姓や附近の町の人の姿が偶に見られるきりであった。お島はその間を、ここでも針仕事などに坐らせられたが、どうかすると若い美術学生などの、函をさげて飛込んで来るのに出逢った。
「こんな山奥へいらして、何をなさいますの」
お島は絶えて聞くことの出来なかった、東京弁の懐かしさに惹着けられて、つい話にを移したりした。
山越えに、××国の方へ渉ろうとしている学生は、紫だった朝雲が、まだ山の端に消えうせぬ間を、軽々しい打扮をして、拵えてもらった皮包の弁当をポケットへ入れて、ふらりと立っていった。
「何て気楽な書生さんでしょう。男はいいね」
お島は可羨しそうにその後姿を見送りながら、主婦に言った。
三十代の夫婦の外に、七つになる女の貰い子があるきり、老人気のないこの家では、お島は比較的気が暢びりしていた。始終蒼い顔ばかりしている病身な主婦は、暖かそうな日には、明い裏二階の部屋へ来て、希には針仕事などを取出していることもあったが、大抵は薄暗い自分の部屋に閉籠っていた。
夏らしい暑い日の光が、山間の貧しい町のうえにも照って来た。