Japanische Klassiker mit Furigana
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あらくれ
あらくれ
徳田 秋声
Lesen Sie あらくれ von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 119.451 Zeichen · 236 Bildschirme
八十九
兄はその頃のことは想い出しもしないような顔をしていた。お島たちの寄ついて来ることを、余り悦んでもいないらしかった。
「あれはああ云う男です。人が悪いっていうんでもないけれど、人情はないんですね」
「早くあの地面を自分のものに書きかえておくようにしなくちゃ駄目だよ」
小野田は、お島の投遣なのを牾しそうに言った。
「あの地面も、今はどうなっているんだか。あの御母さんの生きているうちは、まあ私の手にはわたらないね」
「それもお前が下手だからだよ」
小野田はそう言いながら、望みありげに家へ入って来た。
八十九
小野田がこの家に信用を得るために、母親の傍に坐って、話込んでいるあいだ、お島は擽ったいような、いらいらしい気持を紛らせようとして、そこを離れて、子供を揶揄ったり、嫂と高声で話したりしていた。
「家じゃ島が一番親に世話をやかせるんでございますよ。これまでに、幾度家を出たり入ったりしたか知れやしません」
母親はお島が傍についているときも、そんな事を小野田に言って聴せていたが、彼女の目には、これまでお島が干係した男のなかで、小野田が一番頼もしい男のように見えた。取澄してさえいれば、口髭などに威のある彼のがっしりした相貌は、誰の目にも立派な紳士に見えるのであった。