Japanische Klassiker mit Furigana
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あらくれ
あらくれ
徳田 秋声
Lesen Sie あらくれ von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 119.451 Zeichen · 236 Bildschirme
百四
その頃から工場には職人の数も殖えて来た。徒歩の目弛いのに気を腐していたお島は、小野田の勧めで、自転車に乗る練習をはじめていた。
晩方になると、彼女は小野田と一緒に、そこから五六丁隔った原っぱの方へ、近所で月賦払いで買入れた女乗の自転車を引出して行った。一月の余も冠った冠物が暑い夏の日に焦け、リボンも砂埃に汚れていた。お島はその冠物の肩までかかった丸い脊を屈めて、夕暗のなかを、小野田についていて貰って、ハンドルを把ることを学んだ。
近いうちに家が建つことになっているその原には、桐の木やアカシヤなどが、昼でも涼しい蔭を作っていた。夏草が菁々と生繁って、崖のうえには新しい家が立駢んでいた。
そこらが全く夜の帷に蔽い裹まるる頃まで、草原を乗まわしている、彼女の白い姿が、往来の人たちの目を惹いた。
木の蔭に乗物を立てかけておいて、お島は疲れた体を、草のうえに休めるために跪坐んだ。裳裾や靴足袋にはしとしと水分が湿って、草間から虫が啼いていた。
お島はじっとり汗ばんだ体に風を入れながら、鬱陶しい冠ものを取って、軽い疲労と、健やかな血行の快い音に酔っていた。腿と臀部との肉に懈い痛みを覚えた。