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Japanische Klassiker mit Furigana

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あらくれ

あらくれ

徳田 秋声

Lesen Sie あらくれ von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 119.451 Zeichen · 236 Bildschirme

Aozora Bunko

後は闃寂して、下の茶の室の簷端につるしてある鈴虫の声が時々耳につくだけであった。

お島は後向になったまま、何をするかと神経を研すましていたが、今まで懈くて為方のなかった目までが、ぽっかり開いて来た。そして、ふと紙のうえを軋る万年筆の音が、耳にふれて来ると、渾身の全神経がそれに錘って来て、向返ってその方を見ない訳にいかなかった。

「何をしてるんです、今時分……」

お島はいきなり声を立てて、鶴さんを吃驚させた。鞄のなかには、女の手紙が一二通はみ出しているのが見えた。

鶴さんは、ちらと此方を見たが、黙ってまたペンを動かしはじめた。お島はいらいらしい目をすえて、じっと見つめていたが、忽ち床から乗出して、その手紙を褫奪ろうとした。

「おい、戯談じゃないぜ」

鶴さんはそれでも落着いたもので、そっと書かけの手紙を床の下へ押込もうとしたが、同時に、お島の手は傍にあった折鞄を浚っていくために臂まで這出して来た。

「おい、ちょっと話がある」大分たってから、鶴さんは床のうえに起上って、疲れて枕に突伏になっているお島に声かけた。暴出すお島を押えたために、可也興奮させられて来た鶴さんは、爪痕のばら桜になっている腕をさすりながら、莨を喫していた。