Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠5
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠5 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.120 Zeichen · 516 Bildschirme
果して縁側の戸が一枚あけてあったところから、人の頭がうごめき出でました。
「出たな」
と言って七兵衛は微笑みました。
なるほど、それは人影である。闇の中でも慣れた目でよく見れば、中から這い出すようにして庭へ下りる人は、小脇に白い物を抱えていることがわかります。その物は何物であるかわからないけれども、それを片腕に抱えて、極めて巧妙に家の中から脱け出して来たものであることが一見してわかります。
七兵衛は、じっとその様子を見ていました。果してその黒い人影は庭へ下り立ったが、そこで前後を見廻して暫らく佇んでいました。
待っていたこの裏木戸へ来たら、出会頭に取って押えてやろうと、ほほえんでいた七兵衛のいる方へは、ちょっと向いたきりで人影は、庭の燈籠の蔭へ小走りに走って行くと、急に姿が見えなくなりました。
「おや?」
七兵衛は少しばかり泡を食って、再び眼を拭って見たけれど、それっきり人影が庭から姿をかき消すようになってしまったから、
「出し抜かれたかな」
木の繁みから音無川の谷の中へ下りて見たところが、そこに忍び返しをつけた塀があります。
「こいつはいけねえ」
七兵衛はその下を潜ろうか、上を乗り越えようかと思案したけれど、それは咄嗟の場合、さすがの七兵衛も、どうしていいかわからぬくらいの邪魔物でありました。