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Japanische Klassiker mit Furigana

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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

Lesen Sie 山彦乙女 (やまびこおとめ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.360 Zeichen · 251 Bildschirme

Aozora Bunko

半之助がゆっくりと、囁くように云った。すると花世は、彼に、その柔らかい肩を、凭せかけながら、頷いた。

「ええ、そうね、きっとそうだわ」

「これから五百年、千年のちにも」と半之助は続けた、「また誰かが、此処へ来て、同じように、あの山を眺めるだろうか」

「ええ、たぶん……」

花世は小さな欠伸をした。

彼は云いたかったのだ。過去も現在も、未来も、人間は生きてきて、悩んだり苦しんだり、愛したり憎んだりしながら、やがて死んでゆき、忘れられてしまう。金石に刻んだ碑銘も、いつかは錆び、欠け朽ちて、この世から消滅してしまう。武田一族も亡び、信玄の遺した、伝説の石棺とおぼしい、財宝を秘めた伏岩も、崩れ去った。人間の為したこと、為しつつあること、これから為すであろうことは、すべて時間の経過のなかに、かき消されてしまう。

――慥かなのは、自分がいま生きている、ということだ、生きていて、ものを考えたり、悩んだり、苦しんだり、愛しあったりすることができる、ということだ。

こういったようなことを、云いたかったのである。しかし口にはだせなかった。口にだすにはあまりに感傷的だし、また漠然としていた。