Japanische Klassiker mit Furigana
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やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
Lesen Sie 山彦乙女 (やまびこおとめ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.360 Zeichen · 251 Bildschirme
「――乙女……」
彼は口の中で囁いた。そして、彼女の髪へ、そっと、頬を寄せた。それは冷たかった、冷たかったが、なにかを伝える冷たさであった。彼女の内部から彼の内部へ、なにか(生命そのものといえるようなもの)を、じかに伝えるように思えた。
――おれは生きている。
半之助は心のなかで呟いた。
――生きることができる。
殆んど痛みのような、深い感動が、彼のなかで、ちからづよく、ひろがってきた。彼は、ふところへ入れた花世の手を、上から押え、眼をつむって、(その感動を慥かめるかのように)じっと息をひそめた。すると、半之助の閉じた眼から、涙があふれ落ち、それが花世の髪毛の中へと、吸い込まれた。谷間から、月光に濡れたような霧が、しずかに、二人のほうへ捲きあがって来た。