Japanische Klassiker mit Furigana
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やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
Lesen Sie 山彦乙女 (やまびこおとめ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.360 Zeichen · 251 Bildschirme
「どなたに、どういう用件で、取次ぐのか」
「くにから権之丞がまいったと申せば、わかる筈でございます、早飛脚で手紙がさしあげてあるのですから」
こう云いかけて、権之丞という男は、ふと気がついたらしく、「ああこれは、御無礼を申上げました、お取次ぎを願いたいのは、比女さまでございます」
そのときは、門番のほうでも、申しつかっていたことに、気づいたようすで、恐縮そうに出て来て門をあけた。
「甘利からおいでですな」低い声でそう囁き、「私どもは丸茂家の者でございまして、失礼を致しました、どうぞお通り下さい」
そしてもう一人の小者が、案内に立った。
露路ふうの、敷石みちが、植込のあいだをゆるやかに曲って、数寄屋造りの家の前へと、続いている。その家の玄関の左手に、網代の袖垣があり、そこに一人の若者が、柴折戸をあけて待っていた。
番小屋から、来訪者を知らせる、なにかの仕掛けがあるのだろう、寸の詰った浅黄色の、麻の肩衣と袴をつけたその若者は、権之丞に向って、膝の下まで手をさげ、
「大夫さま」こう云って、二度、低頭した。
権之丞は黙って頷いただけであるが、その日にやけた、眉の濃い、小さな顔にあらわれた表情も、若者の挨拶のしようも、殆んどいかめしいくらい、格式ばったものにみえた。