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Japanische Klassiker mit Furigana

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あるたんぼうきしゃのはなし

平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕

平林 初之輔

Lesen Sie 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.247 Zeichen · 229 Bildschirme

Aozora Bunko

じっさい私にはある感情特に憎悪の感情が極度に昂じてくると、紳士的体面などは一銭銅貨のように投げすててしまい兼ねない傾向があるのだ。がそれと同時に、彼女に極度の憎悪を感じながら、自分が彼女を憎んでいるというだけの理由で、彼女がこの上なくあわれっぽくなってきた。ほとんど涙が出そうになったくらいだった。

そうしてこういう矛盾した考えがすぐおこってきた。

――あの女は決して私のあとをつけているのじゃない。それどころか私の存在などにてんで気がついていないのだ。たといまともに私の顔を見ても私さえだまっておれば、彼女は私だと信じないだろう。本郷の自宅で留守居をしているはずの私が桜木町行きの電車に乗っているというようなことは、あの女の、ことによると一般に女というものの知力や想像力では解すべからざることだ。懐中鏡だって、何も私の行動を監視するためにとり出したのじゃない。今日のような蒸し暑い、汗のだくだく流れる日に、懐中鏡で自分の顔をうつして、白粉がとけるのを心配するのは、すべての若い女に、ごく普通の身だしなみで、東京から横浜まで一度も懐中鏡を見ないような女があったら、それこそ不自然じゃないか。