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Japanische Klassiker mit Furigana

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あるたんぼうきしゃのはなし

平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕

平林 初之輔

Lesen Sie 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.247 Zeichen · 229 Bildschirme

Aozora Bunko

おまけに、彼女はわざとのように、むこうを向いたままで、髪の毛一筋動かさないのだ。

電車が品川まで来たとき、万一あれがみな子なら、山の手線に乗りかえるだろうと思って、私は巧みに人影に姿をかくして、じっと彼女の行動を注視していた。ところが、彼女は下車しないのみか、肩の辺を少し動かして、懐から何かとり出した様子であった。それが懐中鏡であることは、彼女の肩ごしにちらりと見えた反射ですぐわかった。

私の頭には、何とも我慢のならぬ想念が、ふつふつと煮えるように湧き起こってきた。

――やっぱりあいつはみな子にちがいない。あいつは私が昨夜本の間へはさんでおいた手紙をそっと盗み見したのだ。ことによると、私が帰らぬさきに、そっと開封して何食わぬ顔をしていたのかも知れぬ。そして伯母の家へ行くなんて、いい加減な口実をつくって、私のあとをつけてきたのだ。そうにきまっている。いま懐中鏡を取り出したのは、私の行動を監視するためにちがいない。――この考えは、私の心中に何とも抑えきれない憎悪を煽った。私はもう少しで、人前をもかまわず、ずかずかっと彼女のそばへ走りよって、力一ぱい彼女の横っ面を殴りつけてやるところだった。