Japanische Klassiker mit Furigana
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あるたんぼうきしゃのはなし
平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕
平林 初之輔
Lesen Sie 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.247 Zeichen · 229 Bildschirme
これをふしだらな女の身の上話と見られるくらいなら、妾は、いますぐに死んでしまった方がましなのです。
さて、その夜、妾はあの人のことを考えて考えて、肩から胸へかけて板のようにかたくなって、心臓のへんに時々くずれ落ちるような痛さをおぼえるまで考えたのですが、そのうちに眠ってしまいました。
朝起きると、それでも、わずかな時間の睡眠のために、昨夜の出来事が、まるで一世紀も前の出来事だったような気がして、少しきまりがわるくさえなりました。睡眠ということが人間の精神作用に及ぼす影響は実に奇妙なものだと妾は今でも考えることが時々あります。でも起きて三十分もたたぬうちに、睡眠によって回復された妾の心の平静さはすっかりかき乱されてしまいました。もう一分間もあの人のことを考えずにはいられなくなってしまいました。
妾は昨夜別れぎわに貰った名刺を出して見ました。「竹島千一郎」……左の下には住所もはいっていました。
妾はもう矢も楯もたまらないので、机に向かって、レター・ペーパーをひろげました。そしてペンをとりあげました。
――昨夜は失礼いたしました(と妾は書きはじめました)めったにいただいたことのないお酒をいただいたので(ここのところは嘘で、妾はその頃淋しさをまぎらすために毎晩少しずつではあったけれど酒をのんでいたのです)つい失礼