Japanische Klassiker mit Furigana
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あるたんぼうきしゃのはなし
平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕
平林 初之輔
Lesen Sie 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.247 Zeichen · 229 Bildschirme
四月十五日
もしあの手紙がほん物なら、あの人は実にこの上ない悪党だ。がそれよりも、あの傍若無人な相手の女はいったい何者だろう? 「貴方のTより」「妾のN様」なんて実に有り得べからざる文句だ。世の中に図々しい女は色々あると聞いていたが、これ程までに極端に図々しい女が現実にあり得るだろうか? 「でも仕方がないじゃありませんか、そんなこと!」何というバンプ〔(vamp = 妖婦、男たらし、浮気女)〕だろう! そしてあの人は、昨日まで妾の信じきっていたあの人は、どんな顔をしてこの文句を読んだのだろう? 妾のことも、今すやすや眠っている二人の子供のことも忘れて、相好をくずして読んだのじゃなかろうか? ああ、妾には考えることは堪えられない。
四月十五日
また手紙が来た。あの恐ろしいオパール色の手紙が。妾は卑怯な行為だと知りながら、昨日からあの人宛の郵便物を一々しらべてみないではいられなくなった。正午少し過ぎにあの手紙をポストで発見した時、私は毛虫か何ぞのようにぞっとした。あの手紙一本で、この家じゅうが汚れるように思った。でも、それでいて、妾を鉄だとすれば、あの手紙は磁石のような吸引力を妾に対してもっていた。