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Japanische Klassiker mit Furigana

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あるたんぼうきしゃのはなし

平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕

平林 初之輔

Lesen Sie 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.247 Zeichen · 229 Bildschirme

Aozora Bunko

約百枚のレター・ペーパーを読むのに妾はかれこれ三十分かかった。前に妾が読んだのは、二人のラブ・アフェアの一部分の飛び飛びの断片に過ぎなかったのだが、いま一まとめに綴じこまれたこの書類を、順序をたてて読んでゆくと、一つの熱狂的なロマンとなって、妾の胸をしめ木にかけるように、これでもか、これでもかと圧迫した。妾はできるだけ自制しようと努めたけれど、しまいの方になると、のべつにハンカチをつかって涙を拭かねばならなかった。

あの人はその間横をむいて煙草ばかりふかしていた。あんなにつづけさまに煙草をふかしていては新鮮な空気をすうひまがないだろうと思われるくらいだった。つい、今日の昼間読んだ最後の手紙を中途まで読んだとき、とつぜん妾は何とも名状すべからざる痛いような感じが胸を通りすぎて行くのをおぼえた。

――あの人は、あの女からこの手紙で命令された通りのことをしているのだ――この考えは実にだしぬけに、妾の意識にひらめいたのであった。どうしてその時まで気がつかなかったのかいまだに妾にはわからない。

「僕はこの女を愛しているんだ」あの人は妾が手紙を読み了るのを待って言った。