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Japanische Klassiker mit Furigana

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あるたんぼうきしゃのはなし

平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕

平林 初之輔

Lesen Sie 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.247 Zeichen · 229 Bildschirme

Aozora Bunko

あの人はそれから、椅子に腰をかけて、抽斗から錐と紙撚をとり出し、レター・ペーパーの隅っこに穴をあけてそれを綴りこんだ。

この仕事がおわると、あの人は、また巻煙草に火をつけて、ゆっくりと煙を吐き出してから、デスクの上の呼鈴を押した。

下で女中の返事が聞こえた。妾はとつぜん鍵穴から眼をはなし二秒ほどその場に電気にでも打たれたようになってじっとしていたが、女中が階段を上がってくる跫音を聞くと、やっと起ち上がって、しのび足で、階段の降り口まで歩いて行った。妾は手真似で合図をして女中を下へかえし、それからまた書斎の扉まで引き返して、こんこんと二つ形式的に叩音して扉をあけた。

「随分ひどい煙ね。少し開けましょうか?」

返事がなかったので、妾は、右手のフレンチ・ウィンドーを、片側だけ斜に外へ押した。

「そこへかけなさい!」

あの人は無愛想にそばにある椅子を指した。妾はだまって、腰をかけた。何故ともなしに、妾のたった今までの自信が根底からくつがえされたような気がした。

「これを読んでみなさい」こう言ってあの人は手紙の綴じ込みを妾の前へ押した。

妾は、無言で(こういう時には何とも返事のしようのないものだ)読み出した。