Japanische Klassiker mit Furigana
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あるたんぼうきしゃのはなし
平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕
平林 初之輔
Lesen Sie 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.247 Zeichen · 229 Bildschirme
船井三郎という人間はつい三日前に死亡届が出ており、船井家には今生きている者は一人もないので戸籍は無くなってしまっているから抄本はつくれぬという通知であった。
馬鹿々々しい間違いがあるものだと私は田舎役場の出鱈目さ加減を憤慨したが、何しろ東京と鳥取県の田舎では手紙などで照会していたのでは容易に埒があきそうにないので、まだ誰にもそのことを話さぬうちに、党の支部へは、ちょっと急用で郷里へ帰ってくると言いのこしておいて、私はその晩の夜行で東京駅をたった。
都合のよいことには、二十年振りで帰るのだから、村には一眼私の顔を見て私のことを思い出す人などはいない。それにその日はあの地方に特有の雪空だったので、村へ着いた時には誰にも会わずにすんだ。私はまっすぐに役場へ行った。
「僕はこの村の船井三郎君の友人ですが、船井君の戸籍抄本を四通ばかりこさえていただくように頼まれてきたんです」と私はうそを言った。私自身が当の船井だと言ったのでは、色々うるさいことがあって、まさかその足で引き返してくるわけにはいかないように思ったからだ。田舎、わけても自分の生まれた土地というものは、都会にばかり育った人間には想像のつかないほど面倒なことがあるものだ。