Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
にっき
日記
宮本 百合子
Lesen Sie 日記 (にっき) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 79.482 Zeichen · 160 Bildschirme
若き古田大次郎は自分の死を前途に見た。それは動かぬ。動かぬ死に向って床の上に目を醒し、牢の中にも漂う朝の空気を感じた時、彼の心にどんな愛が湧き起るか! 実に微妙な生の悲しき歓喜だ。彼は彼と社会をしゃ断して居る獄扉の上に渦巻く木目から、壁のひび埃に至るまでをおそろしく新鮮な感覚で、その存在を眺めたであろう。
自分は、一ヵ月ばかり前、この感覚を経験した。意識は失わず、然し、自分の死を感じた時、薄弱な自己の存在感に対照して、病室内の家具まで異常な実在として自分に迫って来た。
自分は扉の枠が一枚の平ったい板ではなく三段にくってあるのまで驚歎をもって味い眺めた。ここに人間の仕事がある。一枚の板をいきなりぶっつけず、わざわざ太い線や細い線でそれを三段にくって居る。ここに人間の労作と満足がある。この感じは輝やいて自分を射通した。488 とコールタールで番号を書いてある衣装棚まで自分は視線を以て愛撫した。そして、自分が若しもう十日位で死ぬとしたら、意識がある最後の瞬間まで、自分はどんなにこの扉枠や皮張椅子やを愛すであろう。人生に対するあらゆる愛が寂しきよろこびの中に敏感に圧搾され変な幸福感から涙を流した。