Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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にっき

日記

宮本 百合子

Lesen Sie 日記 (にっき) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 79.482 Zeichen · 160 Bildschirme

Aozora Bunko

三月二十七日

洋杖をついて居る。明らかに病室から戸外散歩を許された附属病院居住氏の一人だ。彼の足どりはゆっくり体のどこかを労るようだが、手の洋杖は勢よく必要以上大きく前後に動かしてはつかれる。男は足で表すことはおぼつかない生活の躍動を、そのステッキで表現して居るようだ。男の動作は、彼の足許にすぐのところからつみ上って居るよごれた雪や電信柱に照す白い色と調和する何ものかがあった。

三月二十七日

バルシク

この棟に一匹猫が居る。胡麻塩の毛だ。ニャーニャ〔病院の付添婦〕にくっついて私の室へも入って来た。或時はすいて居る戸の間から音も立てず入って来て、これもすいて居た戸棚の中へ二分ばかり入って居た。

キス、キス、キス

呼んでも来ず鳴かず、静かな猫だと思った。

青い草の鉢を或朝窓枠にのせた。余り朝日がよくさして、その光線を吸おうとする葉緑素の感じが私の皮膚で感じられたのだ。窓枠で日にすく新鮮な緑色をながめて居ると、胡麻塩猫が例によってしずかに入って来た。

寝台の上に肱をついて半身起き上って居る自分に向ってニャーと鳴いた。珍しい。自分もニャーと返事をした。

如何うしたい、キス、猫は椅子を足場にして窓枠にのった。