Japanische Klassiker mit Furigana
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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
Lesen Sie 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 209.260 Zeichen · 418 Bildschirme
三
「……そうだ、さきに湯にはいって来よう」
勘太は、つい聞き入って、正行が四条畷に出陣するのを待っていたが、急に思いだして、隣りの銭湯へ駈けこんだ。
ここも贅沢とは縁なき衆生の来るところで、一枚のびた銭ではいれるが、湯ぶねはまっ暗だし、男も女も一しょである。隣りの蓆掛けを、ここは板として、湯気出し窓が切ってあるだけに過ぎない。
その湯気の中で、ひとりの男が、ひとりの男へ、こう大声ではなしていた。
「おい、水戸様のご隠居様が、この頃、気が狂ったッてよ。気狂えになっちまったんだとさ。とうとう」
三
西山荘の老公が発狂したとは――うわさにしても余りにばかばかしいので、勘太は軽石で足のかかとをこすりながら、苦笑をふくんで呆れていた。
「ほんとかねえ?」
と、湯ぶねの中のひとりはいう。
「ほんとだとも」
一方は流しへ上がって、
「おらあ今日、仕事先で聞いて来たのだ」
「この頃は、どこだえ」
「仕事場かい。神田橋内さ」
「じゃあまだ柳沢さまのおやしきへ行っているのか」
「お邸内のお成御殿は、おととしから去年にかけて竣工がっているが、またことしの春も、お成があるというので、庭のお手入れだ。