Japanische Klassiker mit Furigana
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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
Lesen Sie 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 209.260 Zeichen · 418 Bildschirme
「ははあ、毎朝暗いうちから、山荘の裏のほうで、犢牛がうなるような声がしていると思うたら、おまえたちか」
「お眠りの邪げになりましたか。恐れいります。あしたからはもっと遠方でいたしまする」
「たわけを申せ。あの頃は、わしはもう風呂所で五体を拭いて読書しておる」
「その風呂所で、実は風邪をひいたのでございます。千回も素槍をしごくと、満身、りんりと汗にまみれて来ますので、毎朝、われわれの下風呂のほうで、水をかぶって、それから着衣いたします。――ところが今朝、例のごとく、ざんざと水をかぶって上がって来ましたところ、大事なものが、紛失いたして見えません」
「大小か」
「いいえ、武士のたましいには違いございませんが、それをつつむものです」
「つつむもの?」
「はい」
「なんじゃ」
「申しあげかねます。……ちと尾籠ですから」
「ははは。和語で申そうとするからいえんのじゃろ。漢音で答えれば何気なく聞えるに。わしが代っていってやろうか」
「お察しがつきましたか」
「犢鼻褌じゃろ」
「そうです」
と、林助は頭をかかえて、
「――そこで、はたと当惑いたし、はて、何者がかくしたかと、探し求めていますと、お手飼の鹿めが、それがしのその物をくわえて、遊んでおりました」