Japanische Klassiker mit Furigana
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おうしゅうきこう
欧洲紀行
横光 利一
Lesen Sie 欧洲紀行 (おうしゅうきこう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 120.107 Zeichen · 241 Bildschirme
ドイツで買った写真機に手をつけてないので、それを持って家内を外へ誘い出した。子供がみな遊びに出ていていないから家内と二人の散策はこっそり逃げ出すようで、何となく興味深い。こんな遊びはほとんどしたこともなかった。これならなるほど人もするはずだと、自宅が見えなくなったころのびのびと新春の気持ちになった。
日光が強くあたって体が少し汗ばみ気味の気だるさも、周囲の枯野や雲を見るのにおっとりとなって来る。冬木立の連った梢が薄紫色にぼうと霞んでいて、まだ新芽の出そうな気配もないから騒がしげな心も起らない。冬日和の人の通らぬ静かな午後である。去年この同じ道を歩いたとき、花を密集させていた椿や柊はもうなくなって家が建っている。森の中で松の大木を引きずり倒す音がする。
陽のあたる道を選んでぶらぶら行くうちに、写真など写す気持ちはなくなって来たが、それでも公孫樹の大木が見えると、妻をその傍に立たせて一、二枚撮ってみた。妻も撮ってやろうというから、私も立って撮ってもらっているうちになかなかこれは良い遊びだと思い初めた。現実の夫婦がまた別の現実を再現し合っているのであるから、理窟はともかく、今までなかった微妙な感覚に、どちらも新しく襲われているのであった。