Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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こはんていじけん

湖畔亭事件

江戸川 乱歩

Lesen Sie 湖畔亭事件 (こはんていじけん) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.335 Zeichen · 137 Bildschirme

Aozora Bunko

それゆえ、いつその脱衣場へ人が来るか、鏡の面を注意している外には、知るべきよすがもないのです。そこで、私は、丁度魚を釣る人が、浮きの動くのを待ち兼ねて、その方ばかり見つめている様に、朝起きるとから、部屋の隅に寝ころんで、小さな鏡を凝視するのでありました。

やがて、待ちに待った人影が、チラリと鏡の上にひらめいた時、私はどんなに胸を躍らせたことでしょう。そして、その人が着物を脱ぐ間、湯を出てから身体をふいている間、今にも変ったことが起るか、今にも変ったことが起るかと、どんなに待ち兼ねたことでありましょう。

ところが、私の予想は、多くの場合裏切られて、そこに現れた男女は、ただそれが、不思議な、薄暗い鏡の表面に、うごめいているという興味の外には、何の変った様子も見せてはくれないのでした。それに、先にもいった通り、初夏とはいえ、山の上では、まだ朝夕は寒いほどの時分なので、泊り客も二三組に過ぎず、酒を飲んで騒ぐために来る客とても、三日に一度位の割合にしかないのです。従って、入浴者も少く、私の鏡の世界は、湖水の景色と同じ様に、なんともさびしいものでありました。