Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
「やあ……どうも、手きびしいですね。しかしね、吉見さん、僕は弁解じゃありませんが、ミス、ミセスにかかわらず敬意を表す方のたちなんです」
「――お兄様って――そうね」
ちょっと伏目になって何気なく云う小枝の瞼と口元にあらわれた微妙なかげが、伸子の目をとらえた。素子もそれに気がついた。
「しかしまあ小枝さんは当分安心していいでしょう、和一郎さんが離れまいからね。ここじゃ留守にフランス人のお客に来られるっていう心配もないだろう」
和一郎は、機嫌のいいときの彼一流の、さざなみがひろがってゆくような軟かい微笑を顔の上に浮べて、素子の言葉にゆっくり、
「まあ、そうですね」
とあいづちをうった。
その表情を眺めていて伸子は、近ごろの和一郎というものがわかったように感じた。和一郎は両親から解放されているばかりでない。どっちかと云えばかたくるしい弟であった保から、何かにつけてうけていた圧迫からも自由になったのだと。そして、彼らしい緻密さで、彼にとってはゆるやかにすぎてゆく生のたのしみを味っているのだ、と。その晩、和一郎の口からは一度も彼の専門にふれた話や社会的な事件にふれた話は出なかった。