Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
ととのった服装のその老人は、気が向くとここへ来ては、樫の大木の根元に立って栗鼠を対手にいくらかのときを過しているのだろう。樫の枝の上からじっと下を見ていて、やがて用心ぶかく幹をつたわっておりて来た一匹の栗鼠は、いくたびか近づいたり遠のいたりしてしらべてから、素早く老人の体をかけのぼって、掌にある南京豆をたべはじめた。南京豆をたべるときの栗鼠は、樫の枝の上にいるときと同じように、老人のカフスの上に後脚で坐って、太い尻尾を立てて、二つの前肢の間に南京豆を捧げもって、小刻みに早く口をうごかした。一つたべ終るごとに、栗鼠は必ず一度草原へ下りて、樫の枝まで戻るのだった。
泰造と伸子は、おもしろくその光景を眺めながら遠くに佇んでいた。
「こういうところがイギリスだねえ」
泰造の声には、羨しさがこもった。
「どこへ行っても大戦後は変ったというし、また事実かわってもいるが、やっぱり同じ昔のイギリスの樫はそのままだ」
なお草原にじっと立って、幾度目かに栗鼠が掌の南京豆に向っておりて来るのを待っている老人から歩き去りながら、泰造が伸子にきいた。
「伸子、きのうパスポート(旅券)の査証をし直しに行ったのかい?」