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Japanische Klassiker mit Furigana

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どうひょう

道標

宮本 百合子

Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme

Aozora Bunko

いま伸子の前で長椅子に腰をおろしている千種清二という青年は、そういう気風をもっている大使館員ごのみの服装でもなかったし、外交官めかしい表情もなかった。彼はごくありふれてごみっぽかった。それはパリにいる日本の画家たちや蜂谷良作の野暮さともちがうものだった。伸子は、

「何か御用でしたかしら」

ときいた。

「おいそがせするようでわるいけれど」

千種というその青年は、がさっとしたところのある低い声で、

「実は、いろいろあなたの話をうかがいたくて来たんですが――」

伸子に時間がないというのを、不機嫌にうけとっている表情をあらわにして、顔をよこに向けた。伸子の方は、千種のそんなものの云いかたや表情から、いっそう彼への冷静さを目ざまされた。伸子は反語的に、

「おうちあわせしてないのにおいで下すったものだから――失礼いたします」

と云った。そして、そのままだまりこんだ。

千種は、長椅子にかけている上体を前へ曲げて開いている膝に肱をつっかい、髪の毛を指ですくようにした。その顔をあげて、

「僕はかねがねモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ行ってみたいと思っていたんですが」