Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
蜂谷は、そういう伸子をいくらか解せなそうに、
「僕の方は、ほんとにかまわないんですよ」
額によこ皺をよせるようにして伸子をみた。
「一人じゃ、交渉なんか、めんどうくさいでしょう?」
伸子の言葉が不自由なのを、蜂谷はそういう表現で云った。
「ありがとう。――でも、また無駄足だとわるいから……」
何となし伸子にはそんな予感があった。
「そんなことは、室さがしにつきものだ。ともかく、あした、あなたのいい時間によりましょう」
キャルディネ通りの下宿の経営者はふるい軍人あがりらしい老人であった。彼が、ともかくうちの庭を見て下さいと、蜂谷と伸子とを、いきなり庭へ案内したのは、かしこいことだった。というのは、こぢんまりした三階の建物に沿ってしつらえられている生粋にフランス風の小砂利をしいた細長い庭こそ、その下宿の気質を語っていたから。奥が深いかわり間口が狭い庭に、夏の日をしのぎよくするための葡萄棚がつくられていて、建物の入口の横から庭へはいる境は、低い植込みだった。手入れのゆきとどいた小砂利の上には、白く塗った鉄の庭園用テーブルと同じ椅子が三つ四つおかれて、その一つに、黒ビロードの部屋着を羽織った髭の白い老人が、小型の本を片手にもってよんでいた。