Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
老人の頭に、黒ビロードの室内帽がかぶられている。老人は、しずけさのうちにゆるゆるとすぎていく時間を居心地よく感じているらしく、低い植こみのかなたに現れた伸子と蜂谷の方へ、自然な一瞥を与えたきり、ふたたび読書に没頭して行った。
パリの賑やかさのうちに静けさをたのしんで生きている恩給生活者を主な客としている下宿であることは、庭の様子に語られていた。そして、どこか武骨なところのある経営者は、自分の下宿が、古いフランス流儀でとりまかなわれていることを、ほこりとしているにちがいないのだった。
建物について入口の方へもどって行きながら、伸子は、
「何て、ことわりましょう」
こまったように蜂谷良作を見上げた。
「面白いけれど、住めないわ。――あんまり巡回図書版のアナトール・フランスごのみで……」
蜂谷良作は、入口の石段のところに立って彼らの戻って来るのを待っていた経営者に、
「非常に居心地よさそうで、ちゃんとした庭をおもちですね」
と云った。
「そうです、そうです、ムシュウ」
「ところで、あなたの下宿は、外国人にあんまり馴れておいででないように見うけますが……」
「そうです、そうです、ムシュウ」