Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
伸子の記憶に、まざまざと、その大学のまわりで過した一年ほどの月日の様々な場面が甦った。大図書館の大きな半円形のデスクに、夜になると、緑色シェードの読書用スタンドが数百もついていた光景。楡の木影がちらつく芝生に遊んでいた栗鼠。アムステルダム通りとよばれている寄宿舎前の古いごろごろした石敷の坂道を跳ね越えて、女学生達がよくかけこんでいた向い側の小さな喫茶店。どこも快活で、気軽で、愉しそうだった。そこへ、いつも山高帽子をかぶり、手套をきちんとはめていた佃の姿が陰気に登場する。つづいて、その腕にすがって、様々の混乱した思いのなかに若々しい丸顔を亢奮させつづけていた伸子自身の、桜んぼ飾のついた帽子をかぶり、マントを羽織った姿が浮んで来る。無限にひろがりそうになる思い出の複雑さを切りすてるように、伸子は、その大学が第一次ヨーロッパ大戦のあと、ドイツの侵略に対して英雄的に抵抗したベルギーの皇帝夫妻に、名誉博士の称号を与える儀式を挙行した、その日の光景を思い出して、リン博士に話した。
「ああ――それは、わたしたちが国へかえるすこし前のことでした」
わたしたちと複数で云われたことが、伸子の耳にとまった。