Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
さもなければ、その身ごなしをみても一日じゅうの仕事の予定をきっちり立てて活動しているらしいリン博士が、わざわざこの薄暗くて、お茶さえもないメトロポリタンの一室へ来て、伸子ととりとめない話をしようとは思えないのであった。どうしたらいいだろう。伸子は、さしあたってリン博士にうちあけて相談しなければならないようなどんな問題ももっていなかった。額のひろい色白で、眉と眉との間の明るくひらいている伸子の顔に、理解力と感受性のゆたかさはあっても、明確に方向のきまった意志の力はよみとれない。伸子の内心の状態も、彼女のその表情のとおり軟かくて、きまっていなかった。伸子が自覚し、意志しているのは、よく生きたいということだけだった。伸子は、こまって、また自分についての説明に戻って行くしかなかった。伸子はやや唐突に云いだした。
「わたしには、政治的な知識も、政治的な訓練もありません――社会の矛盾は、つよく感じているけれども」
リン博士は、前おきもなしにいきなりそんなことを云いだした伸子の顔を平静な目でちょっと眺めていたが、
「わたしたちの国の文学者も、つい最近まではそうでしたよ」