Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
白い石の卓をさしはさんで蜂谷と向いあわせにかけながら、いまも、伸子は興味をそそられた顔つきで、まわりの光景を見まわしているのだった。こういう場所では伸子自身も見られているわけだったが、こだわらない楽な気分だった。
「――お金の話ばっかりのようね」
帽子かけには、パリの小市民の男がかぶっている黒い山高帽がかかっていて、ウェイタアの前掛も純白とはゆかないその店内では、伸子の耳もとらえずにいないほど活溌に数字をあげて金の話がかわされていた。しかし、伸子の小耳にはいる金高は、そのようなレストランにふさわしく、日常的な額だった。十月二十九日におこったウォール街の恐慌はその最悪の状態がまだ収拾されなくて、数日のうちに何百万という人々が五百億ドルから六百億ドル貧乏になりつつあった。ニューヨークの質屋が未曾有の大儲けをしていると報じられている折からだった。クラマール洗濯工場主ベルネが、十月三十日の夜、彼の商売のなりゆきについて心配したように、このレストランの帽子かけに、ずらりと山高帽をかけ並べている男たちとそのつれの女たちは、平凡な昼食をとりながら、フランスの経済と政治とを支配している十二人の大資本家たちの大釜から流し出される不安定な利潤について、議論しているのだった。