Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
伸子が、そういう遊びごとをきらうことを素子はよく知っている。ところもあろうにモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)にいてそんなことにまた耽りはじめるとすれば、そのみじめさの動機は、伸子がパリに勝手に暮しているからだ、素子はそう云おうとしている。伸子にはそうとしかとれなかった。だけれども、吉見素子はれっきとした一人前の人間であり、三十をこした女ではないか。伸子の気のよわさで、冷淡でいられない下らない習慣にたよって、はらはらさせて、それで伸子をパリから帰らせようとするのだったら――伸子は、声に出しておこった。悪魔!
手のなかに感じる素子の腕を、ブラウスごとつかんではげしくゆすぶるように、伸子の心は素子をせめつけた。これまでの手紙で、一度でも伸子に早く帰れと云ってよこしたことがあったろうか。佐々のうちのものがモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)経由でシベリア鉄道にのりかえ、日本への帰途についたとき、素子がよこした手紙に、伸子のパリ滞在についての素子の意見は示されていなかった。同時に、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)への土産に伸子がおくったこまごました土産袋についても、素子はひとこともふれなかった。