Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
長年かくしだてなくいっしょに暮して来ている素子が、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)にいて、パリの伸子がよこす手紙の下から、何か語られていないものがある感じをうけるのは、当然だと思わなければならなかった。ほんとに、このごろの伸子は素子に話さないこころの揺れにゆられているのだから。
それを字にかいてしまえば、もうそれは現実なものとなってしまいそうに不安だものだから、水が渦巻くように怨みごとをつらねながら、なお率直に、きみは、おおかたわたしのいないところで恋愛でもしているんだろう、ときめつけることもできずにいる素子の、素子らしい苦しみかた。――
素子にうちあけていないのはよくないとして、でも、このごろの蜂谷との微妙な格闘を、伸子は何と素子にしらすべきなのだろう。寝台のかけものの上で掬ってはおとしていた手紙のきれを、伸子は少しずつつまんで傍の封筒へいれて行った。結局蜂谷良作は蜂谷良作であり、伸子は伸子としてのこるだろう。その予感が、こんなにはっきりしているのに。その予感にかかわらず、伸子のこころは、あるところまで決して退場することなしに、この経験を追求しようとしているかたい決心のようなものがあるとき。