Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
微妙で、はげしく、限界のきまっていない男と女のひきあいの間で、伸子と蜂谷とは、きわどく近づき、またはなれ、舞踊のように自身をためしながら格闘した。その格闘は、ひきわけに終りつつある。格闘のなかには、幾世紀もの間、男と女とが互の上にくりかえして来た征服の意欲とはちがった互格のはりあいがあり、それは何かの新しい意味をもっている。結論として、伸子が、断然モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ向って出発するという形をとって表現されるような。――
「じゃ、ほんとうに、さようなら。いろいろありがとう、よく暮しましょう、ね。きっと、ね」
伸子の言葉を縫って発車のベルが響いた。蜂谷は、うめくような喉声といっしょに伸子をつよく抱擁して背骨がくじけそうにしめつけた。そして、あとを向かず車室を出て行った。
伸子は、眠りはじめた。くたびれきって、同時に云いようのない自身からの解放の感じにつつまれながら。フランスとドイツの国境を伸子は夢中ですぎた。ベルリンの数時間は、伸子が眠りと眠りとの間に目をあいて、たべて、日本語を話して、ファイバーのスーツ・ケースを買った数時間であった。