Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
自由・平等・博愛と三つの偉大な文字の鋳出されているサンティームの小銭には、何とすりへらされたのが多かったろう。ときどき伸子は、自分のひとさし指の腹ぐらいの小さいサンティームの銅貨の半円がまるで砥石ですったようにひどくすり減らされてそっち側のふちだけが薄く薄くなっているようなのを受取った。また全体が平らに磨滅して、鋳出されている自由も平等も博愛もとうに消えうせてしまって、小さい火傷のひきつれのような銅色に光っているのをもったこともある。
モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)で、赤いロシア皮の財布に入れて伸子がつかっていた貨幣にも、標語が鋳出されていた。ロシアらしく厚手で大きい銅貨にも銀貨にも「万国の労働者、団結せよ」と鋳てあった。これは野暮だが、理論と実行の方向の示された言葉だった。その字が鋳出されている銅貨は、まだソヴェトの十年では新しかった。たとえそれがどんな形にすりへらされたにしても、そこに鋳出されている字は、その磨滅への絶えざる抗議を組織するようだった。自由・平等・博愛という言葉の響きは、愛ということばのように伝統の力でいきなり人々の情感にふれるからパリのすりへった小銭はそれを見るものにまざまざと厖大なパリに営まれている生活の、こまかい辛酸を生々しく感じさせるのだった。