Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
素子は、枕のよこに時計をおいて伸子を待っていた。日曜日にたのめるような医者は見つからず、月曜まで何とか二人でしのがなければならないことを告げながら、三色菫の袋を出すとき、そういう事態を自分の無力さからのように困って、伸子は腋の下を汗ばました。素子は、歯の痛さと、もどかしさとから、逆上しそうだった。
「ベルリンにいたのに、うっかりしていたわねえ、アスピリンぐらい買っておけばよかったのに。――何かそういう薬、きいてみましょうか」
「やめてくれ」
素子は涙をこらえている眼つきで、苦しそうに総毛だちながら伸子を見あげた。
「三色菫なんかよこすところをみちゃ、とても安心できやしない。ごめんだよ」
寝台のわきに坐って、ぐったり投げだしている素子の手をとってしずかに撫でながら、伸子は、素子の歯痛が、たちのよくないものでないように、と絶えず不安だった。パリへ来て、やがて半月になろうとしているのに、二人の交際範囲は相変らず磯崎夫妻にとどまっていた。このパリでの極端なつき合いのせまさが、きょうのようなときに途方にくれる状態をひきおこしているとも云える。伸子はちょくちょく素子の額にさわってみた。