Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
「熱がでていないから、化膿性のものじゃないことだけはたしかよ――大丈夫だわ、――でも、痛い?」
「きまってるじゃないか、ばかだなあ」
素子は、痛さに気をとられていて、そのことに思い及ばないらしかったが、伸子の心には自分の気持についての不安があった。パリにいる日本の人たちとの社交的なつき合いを意識的にさけているのには、伸子の意見がつよく影響していることであったから。――
ガリック・ホテルへ移って間もない或る日のことだった。外出から帰って来た伸子たちは、帳場で室の鍵といっしょに一枚の名刺をわたされた。それは、もう数年間パリに生活しているある新聞社のパリ特派員の名刺だった。この人によってその新聞の文芸欄に折々パリの文壇、画壇、楽壇の消息がのせられるのを伸子は日本にいたころから読んでいた。パリに滞在している年月が長い上に、その人に特有の気質が加ってか、彼のパリ通信は、多くの場合、ただの報道ではなかった。フランスの著名な芸術家たち、パリへ行っている日本の知名人たちとの交遊の雰囲気、友達づきあいの空気がただよう通信だった。その特徴から、いつとはなし伸子は、その人の名や特徴を記憶するようにもなっていたのだった。