Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
むずかしい自分の立場の意識から、そのひとは素子に対しても義理ある長女としての取りあつかいに疎漏ないようにつとめたあとは、一切かかわらない風だった。モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ来ても、素子は父親にあててだけ手紙をかいていた。
保への手紙をかき終ったばかりで亢奮ののこっている伸子は、
「一度でいいから、ほんとに一字一字わたしに話してくれている、と思えるような手紙を母からもらってみたいわ」
と云った。
「母の手紙ったら、あいてがよめてもよめなくってもそんなことにはおかまいなしなんだもの……」
「――」
素子は、そういう伸子の顔を見て賢そうで皮肉ないつもの片頬の笑いをちらりと浮べた。そう云えば、父の泰造には、母のあのするする文字がみんなよめたのかしら、と伸子は思った。昔、泰造がロンドンに行っていた足かけ五年の間に、まだその頃三十歳にかかる年ごろだった多計代は、雁皮紙を横にたたんで、そこへしんかきのほそくこまかい字をぴっしりつめて、何百通もの手紙をかいた。若かった多計代は、そういうときは特別にピカピカ光るニッケル丸ボヤのきれいな明るい方のランプをつけ、留守中の泰造のテーブルに向って雁皮紙の手紙をかいた。