Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
第二章
一
カトリ丸の出帆は汽車と同じように日どりを狂わせない。さぞ大騒動であろう佐々の全員の出発も、船の出帆ばかりはのばさせられないという条件から確実にされている感じで、特別な連絡のないかぎり、旅程は順調にマルセーユに向って進められているものと伸子は信じていた。
六月も末になるとパリにも夏らしい暑さがはじまった。メーデーがすぎると急に乾きあがって昼間は埃っぽくなるモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の夏とちがって、パリの空気は乾いて燃えはじめても、埃っぽさは少なかった。ガリック・ホテルの伸子の室は、午後になるとこれまでよりずっとひろく深く西からの日に照りつけられて、夜更けまで露台へのドアをあけておくようになった。建物の内庭に面した素子の室では西日はささないかわり、朝早くその内庭へ来るボロ買い男の調子のいいよび声や、内庭で自働オルガンをならしながら、窓々から小銭のなげられるのを待っている物乞いの唄、ラジオだかレコードだか小刻みなフランス風のダンス曲など、さまざまの響が窓からはい上って来た。二人はガリック・ホテルの三階から、七階のてっぺんの部屋に移ったのだった。