Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
伸子は、このごろ直接多計代あての手紙は書かなくなってしまっていた。モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の町に雪があったころ、保にかいた手紙のことで多計代から来た手紙を、伸子は半分よんだだけでおしまいまで読めなかったことがあった。それ以来、伸子は時々エハガキに近況をしらせる文句をかき、佐々皆々様、という宛名で出していた。動坂の家からは、伸子が東京あてのエハガキをかくよりも間遠に、和一郎がかいたり、寄せ書きしたりした音信が来た。相かわらずとりとめなく、どこへドライヴしたとかいう出来ごとばかりを知らせて。
メーデイの前後しばらくの間、伸子はちょくちょく父のペンでつけられた赤インクのかぎつきの新聞記事を思い出してこだわった。
泰造が、例によって一人がそこにいる朝の食堂のテーブルであの新聞を読み、無意識に、入歯のはいっている奥歯をかみ合せながら、しっぽのひろがった太く短い眉をひそめてすぐテーブルの上においてあるインクスタンドからペンを執り、せっかちな手つきで赤インクのかぎをかけたときの顔つきが、手にとるように伸子にわかった。泰造のその表情や、わるく刺戟的な赤インクのかぎをかけた新聞を送らせるようなやりかたのなかに、伸子は、これまで心づかなかった父と自分との心のへだたりを知った。