Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
姉さんが遠い外国に生活しているのに、こんなに僕のことを考えていてくれたのに僕はびっくりした。そこには、保の柔かな心情が溢れていた。保が高校入学祝にこしらえて貰ったという温室の一つで、金がなくって困っている高校生の一年分の月謝が出たかもしれないと伸子が言ってやったことについて、保は率直に、僕はまるでそんな風には考えてみなかったといってよこした。僕はそれをたいへん恥しいことだと思う。その一句のよこには特別な線がひいてあった。あのハガキをよんだとき、伸子はそういう保の心をどんなに近く自分の胸に抱きしめただろう。かわゆい保。――新しい悲しさで茶のコップをとりあげた伸子の喉がつまった。
そのとき、テーブルの向い側からエレーナ・ニコライエヴナが、さっきからの話のつづきで、変に上気した顔つきをしながら伸子に向って、
「あなたは小説をおかきになるんですってね。婦人の作家としてトルストイのこの問題をどうお考えです?」
と話しかけた。伸子はエレーナ・ニコライエヴナの人がらにも話ぶりにも、どちらにも好感がもてなかった。エレーナ・ニコライエヴナは食卓の礼儀とすれすれなところで、赧ら顔の頬から顎にかけて剃りあとの濃い、口元にしまりなくて羽ぶりのいい技師とトルストイをたねにいちゃついているだけのことだった。