Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
自分に話しかけられると、彼女は軽蔑しきった視線をちらりと素子になげて、技師の細君に向って云った。
「ほんとにきょうは偶然御一緒に散歩できて愉快でしたわ。ねえリザ・フョードロヴナ、ぜひ近いうちに皆さんともう一度、あの寺を見に参りましょうよ、リジンスキー教授に説明して頂きながら……」
素子は、そんなことがあってから益々エレーナと技師の行動にかんを立てた。ゆうべ、廊下で二人が接吻してるのを見かけた、ということもあった。伸子は苦しそうな顔つきになって、
「いいじゃないの。放っておおきなさいよ。おこるなら奥さんが怒ればいいんだもの」
と云った。
「エレーナはおもしろがっていてよ。あの日本女、やっかんでいると思って――」
「チェッ! だれが!」
素子は顔をよこに向けてタバコの煙をふっとはいた。
「あんまり細君をなめてるから癪にさわるんじゃないか」
正義感から神経質になっている自分を理解していない。そう云って素子は伸子をにらんだ。
耳にきこえ、目にも見える夏のパンシオンらしい些細な醜聞に、伸子は半分も心にとめていなかった。保が死んで日がたつにつれ、動坂の家というものが、いよいよ伸子にとって遠くのものになって行った。