Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
伸子の番がきたとき、年とって肥った理髪師は、ただ刈りあげて、という伸子の註文を、
「毎度こうなんでしょう? あんまり簡単すぎますよ」
と云いながら、白い布でくるまれた伸子の背後で鋏を鳴らした。
「御婦人の髪の毛は、羊の毛とちがいましてね、バーリシュニャー(お嬢さん)ただ刈りさえすればいいってわけのもんじゃありません――まあためしにやらせてごらんなさい」
肥った理髪師は、体で調子をとりながら次から次へと鏝をとりかえて、伸子の髪にあてて行った。鏡の上に動いている理髪師の白くて丸っこい手もとを見ていても、自分の髪がどんな風にできあがってゆくのか、伸子には見当がつかなかった。
「わたしは、あんまり手のこまない方がいいのよ」
「ハラショー、ハラショー。こわがりなさるな」
やがて、
「さあすみました! いかがです?」
闘牛のマンティラでもさばくような派手な手ぶりで、伸子の上半身をすっぽりくるんでいた白い布をとりのけると、肥った理髪師は、ちょっと腰をかがめて、伸子の顔の見えている同じ高さから鏡の中をのぞいた。そして、
「トレ・ビアン!」
フランス語で自分の腕をほめた。
鏡の中の伸子は、頭じゅうに泡だつような黒い艷々したカールをのせられているのだった。