Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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どうひょう

道標

宮本 百合子

Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme

Aozora Bunko

十二

妻であった五年の間に、日本の権力が伸子の公然たる結婚に対して与えたものは、いくばくのものであったろうか、と。妻になったということで法律上の人格がうばわれたほかに、伸子のうけた社会的存在のしるしは、佃の月給に二十五円ずつ加えられていた家族手当と、年に四俵か五俵、独身者よりもよけいに学校からわけられる炭俵だけだった、と。

十二

葡萄の房でも眺めるように、伸子は枕に仰向いている顔の上へ両手で一対の耳飾りをつまみあげて見ていた。ちょうど伸子の小指のさきほどある紫水晶が金台の上にぷっちりとのっていて、その紫から滴りおちたひとしずくの露という風情に小粒なダイアモンドがあしらわれている。大きな紫水晶の粒は非常に純粋で、伸子のベッドの頭の方からさしこんでいる雪明りに透かすと、美しい葡萄の実のように重みのある濃い暗紅の光を閃かせている。

いかにもモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の富裕な商人の妻の耳につけられたものらしい趣味のその耳飾りは、伸子の誕生日の祝いに、素子が買って来てくれたものだった。そのままでは伸子に使いようがないから、二つの耳飾りを一つにつないでブローチにこしらえ直すという素子の計画だった。