Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
その日は素子のいるうちに入浴がすんだ。その素子も帰ったあと、雪明りが赤っぽい西日にかわってゆく時刻の病室で、半分ねむったような状態でいた伸子は、
「こんにちは――入ってもいいですか」
という男の声にびっくりして目をあいた。ドアのところに、黒い背広を着て、がっちりした背の高くない日本人の男が佇んでいる。伸子は枕の上から頭をもたげるようにして、そのひとの方を見た。全然見たことのない色の黒い四角ばった顔だった。伸子は、入っていいともわるいとも云わず、
「どなたかしら」
ときいた。
「権田正助です。――大使館へ行ったらあなたが病気でここへ入院しておられるってきいたもんだから、ちょっとお見舞しようと思って」
権田正助という名は、伸子の耳にも幾度かつたわっていた。どこかの海で、国際的な注目のもとに第一次大戦当時沈没した旅客船のひきあげに成功して有名になった潜水業者であった。
権田正助は、自分を自分で紹介しているうちに、病室へ入って来た。そして、
「やあ、初めておめにかかります」
頭を軽くさげ、さっさとあいている長椅子に腰をおろした。
「ロシアの病院なんてどんな有様かと実はばかにして来たんだが、案外なもんじゃないですか。