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Japanische Klassiker mit Furigana

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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡

野村 胡堂

Lesen Sie 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 141.130 Zeichen · 288 Bildschirme

Aozora Bunko

三

三

平次と八五郎は、山谷の駄菓子屋に、菱屋の娘のお茂を訪ねました。

「丸屋の金蔵が行方知れずになったのだが、お前さんへ手紙でも来なかったかい」

平次は穏やかに始めました。駄菓子屋の裏手、共同井戸の側まで誘い出して、あまり人目に立たないように埒をあけようと思いましたが、秋の陽は意地悪く照しつけて、あんまり楽なお白洲ではありません。

「何にもありませんよ」

お茂は恥かしそうにもしません。二十二三の良い年増で、烈しい秋の陽の下でも、なんの隈もない美しさは、金蔵や利八を夢中にさせるに充分だったでしょう。

それにしても、万両分限の娘というにしては、少し自堕落で艶きます。

菱屋が没落してから三年、江戸を外にして放浪して歩いて、艱難と貧苦とが、この女から大店の娘らしい上品さを奪って、媚態と下品さだけを残したのでしょう。

「金蔵となにか約束でもあったのかい」

平次は突っ込みました。

「え――新鳥越の店にいる頃から約束のあった仲ですもの」

お茂はそれが当り前のような口調です。

「どうしてそのころ一緒にならなかったんだ」

「番頭の清七が不足を言い出したんです、――三宅島で死んだ清七ですよ」