Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控(十一)懐ろ鏡 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 141.130 Zeichen · 288 Bildschirme
「…………」
娘はチラリと平次の方を見ましたが、相変らず黙りこくって、唇を開こうともしません。
「銭形の親分だよ。お前のために悪いようにして下さる気遣いはない。知っていることをみんな言うがいいぜ」
ガラッ八は横から長い顔を出しました。昨日も一度逢ってるんで、これはいくらか心易立てです。
「申しますワ、銭形の親分さんなら」
娘は顔をあげました。長い瞼毛が濡れて、真珠のような涙が豊かな頬にこぼれます。
「それがいい。――お前が正直にしてくれさえすれば、この俺が引受けて、悪いようにはしてやらない」
平次はそう言いながら、もういちど立上がって、娘を縛った扱帯を、みんな取払ってやりました。後ろの方で、小峰右内がむずかしい顔をしておりますが、平次はそれを振り向いても見なかったのです。
「私はやはり、ここのうちの子なんです。浜路というのは、私の名前に違いありません」
娘の言葉は平次にも予想外でした。
「それはお前、本気で言っているのか」
「え、――もっともそれを知ったのは、ツイ一と月前のことだけれど」
「それまでお前は何という名だったんだ」
「関といいました。草加の百姓午吉の子ということで育ち、浅草に引っ越して、もう十年にもなります」