Japanische Klassiker mit Furigana
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あらくれ
あらくれ
徳田 秋声
Lesen Sie あらくれ von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 119.451 Zeichen · 236 Bildschirme
涼しい風が、日に焦け疲れた二人の顔に心持よく戦いだ。
水のような蒼い夜の色が、段々木立際に這い拡がって行った。口も利かずに黙って腰かけているお島は、ふと女坂を攀登って、石段の上の平地へ醜い姿を現す一人の天刑病らしい躄の乞食が目についたりした。
石段を登り切ったところで、哀れな乞食は、陸の上へあがった泥亀のように、臆病らしく四下を見廻していたが、するうちまた這い歩きはじめた。そして今夜の宿泊所を求めるために、人影の全く絶えた、石段ぎわの小さい祠の暗闇の方へいざり寄って行った。
「ちょっと御覧なさいよ」お島は小野田に声かけて振顧いた。
今まで莨を喫っていた小野田は、ベンチの肱かけに凭れかかっていつか眠っていた。
「この人は、為様がないじゃないの」お島は跳あがるような声を出した。
「行きましょう行きましょう。こんな所にぐずぐずしていられやしない」お島は慄えあがるようにして小野田を急立てた。
二人は痛い足を引摺って、またそこを動きだした。
「何でもいいから芝へ行きましょう。恁うなれば見えも外聞もありゃしない」お島はそう言って倦み憊れた男を引立てた。
食物といっては、昼から幾んど何をも取らない二人は、口も利けないほど饑え疲れていた。