Japanische Klassiker mit Furigana
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あらくれ
あらくれ
徳田 秋声
Lesen Sie あらくれ von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 119.451 Zeichen · 236 Bildschirme
彼はそう云って、どんな忙しい時でも下等な仕事には手をつけることを肯じなかった。
「それじゃお前さんは貧乏する訳さね」
お島も躯の弱いその男を、そんな仕事に不断に働かせるのを、痛々しく思った。
「それにお前さんは人品がいいから、身が持てないんだよ」
お島は話ぶりなどに愛嬌のあるその男の傍にすわっていると、自然に顔を赧くしたりした。黒子のような、青い小い入墨が、それを入れたとき握合った女とのなかについて、お島に異様な憧憬をそそった。
「いくつの時分さ」
お島はその手の入墨を発見したとき、耳の附根まで紅くして、猥な目をった。男はえへらえへらと、締のない口元に笑った。
「あっしが十六ぐらいのときでしたろう」
「その女はどうしたの」
「どうしたか。多分大阪あたりにいるでしょう。そんな古い口は、もう疾のむかしに忘れっちゃったんで……」
暮に彼の手によって、濁ったところへ沈められた若い女のことが、まだ頭脳に残っていた。
「そんな薄情な男は、私は嫌いさ」
お島はそう言って笑ったが、男がその時々に、さばさばしたような気持で、棄てて来た多くの女などに関する閲歴が、彼女の心を蕩かすような不思議な力をもっていた。