Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠5

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠5 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.120 Zeichen · 516 Bildschirme

Aozora Bunko

と言って、いったん懐ろへ入れた悪女大姉の位牌を、荒々しく懐中から取り出してそれを振り上げました。

「こんなものは要らない!」

お銀様は水の面を睨んで突立っていると、そこへ不意に物の足音がしましたから、お銀様はあわてて、

「おや?」

驚いて振返ったお銀様は、

「見たような犬だ」

見たような犬も道理。いつのまにかお銀様の背後に近づいていたのは、自分の実家、有野村の藤原家へ雇われていた召使の女、お君の愛するムク犬であることは、その家のお嬢様であったお銀様が見れば、見違えるはずはないことであります。恵林寺から程遠からぬこの辺に、ムク犬が現われることは不思議はないが、三日前のあの大水の中で溺れることなく、こうして健在でいることが不思議であります。

お銀様はあの時、お君について駒井家に赴くべくわが家を去って以来、ムク犬の身の上は知りませんでした。

今ここに偶然めぐり会ってみると、不思議に堪えないながらも、さすがに懐しい心持が湧いて来ないでもありません。

「おや、お前はムクではないか」

と言った時に、ムクの後ろから少し離れた土手の上に、人の影が一つ見えることに、はじめて気がつきました。