Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠5
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠5 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.120 Zeichen · 516 Bildschirme
この人は旗本の隠居でも、そんなに大身ではありません。三百石ほどの家督を倅に譲って隠居の身だけれども、若い時分から家の経済が上手でありました。それ故に、今の身分になっても裕福であります。
こんなに夜が更けて帰っても寝る前に、ちゃんとその日の算盤を置いてみなければ寝られない癖がありました。他へ廻して貸付けさせた金の利廻りや、地面家作の取立てや、知行所の上り高というようなことを、倅に代っていちいち算当して、帳面を記しておかねば寝られない癖です。当時、大名にも旗本にも、内緒の苦しいのが多く、うわべは大身に構えても、町人に借金があって首が廻らなかったり、また札差をさんざん強請るようなことが、少なくとも己れの家に限ってはその憂いのないことと、利が利を産んで行く未来の算をしてみると、いつも一種の得意に満たされて、言わん方なき快感を催すのでありました。その快感に浸されながら、枕について夢を結ぶのが十年一日の如く、この老人の習慣でありました。
そうかと言って、この老人は吝嗇と罵られるほどに汚い貯め方をするのでもありません。相当のことだけはして、誰にもそんなに見縊られもせずに伸ばして行くところは、なかなか上手なものです。