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Japanische Klassiker mit Furigana

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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

Lesen Sie 山彦乙女 (やまびこおとめ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.360 Zeichen · 251 Bildschirme

Aozora Bunko

彼女の荒い呼吸が聞え、香の匂いが半之助の鼻を掩った。それほど近かった。

姉に突き放された花世は、悲鳴のように、姉を呼びながら、岩の砕片の山を、這い登って来た。

「待って、お姉さま」

姉の身ごなしは、憑きものでもしたように、早かった。

「お帰り、乙女」

彼女は奥へ走り去りながら、こう叫んだ。

「早く、早く、もう此処は……」

花世は泣きながら、ようやく崩れた岩の上へ登った。それを半之助が、横から、すばやく抱き止めた。

それは殆んど反射的な動作であった。花世は恐怖の叫びをあげ、手と足でもがいた。半之助は黙って、しかしけんめいに、彼女の抵抗を抑え、なかば夢中で、がらがらと崩れる、岩の砕片の山を、穴の上のほうへと登りだした。

そのとき洞窟の崩壊が始まった。

崩壊がどういうふうに始まったか、あとで考えてもまるでわからない。それは、初め重くるしい音響と、洞窟ぜんたいの震動で始まり、次いで、奥のほうから、すさまじい風と、岩屑と、土煙がおそいかかった。岩の崩れる音と、地盤を揺りたてる震動の恐ろしさは、形容しようのないものであった。轟々たる音響と、激しい地揺れにうちのめされ、花世をかたく抱いたまま、半之助は、意識を失ったもののように、穴の中途で身を縮めていた。